採用面談の評価にAIを使うなら、「書いていないこと」を埋めさせないで

社員20人ほどの会社で、営業事務の採用面談を終えた担当者へ。 面談メモをAIで評価表に整えるとき、発言にない人物像まで書き足されていませんか。

この記事では、発言と推測を分け、次に確認する質問まで作る方法を紹介します。
面談直後は覚えていたはずなのに、評価表を書く頃には「受け答えが丁寧だった」という印象しか残っていない。兼務で採用を担当していると、そんな場面もあると思います。
そこでChatGPTにメモを渡し、「この人を評価して」と頼む。読みやすい文章が返ってくると、そのまま社長に共有したくなります。
私がここで線を引きたいのは、文章を整えることと、応募者について新しい判断を加えることです。採用面談でAIに手伝わせるなら、まずこの境界を決めておきましょう。
メモにない「調整力」は、どこから出てきた?
想定例として、営業事務の応募者との面談を考えます。確認したいのは「納期の問い合わせを受けたとき、社内確認をしてから回答できるか」です。
担当者のメモには、次の内容が残っていました。
面談メモの例
- 前職で受注入力を担当していた。
- 本人発言:「納期が分からないときは、営業担当に確認していました」
- 複数の問い合わせが重なった場合の対応は、質問していない。
- 面談担当者の印象:受け答えが丁寧だった。
このメモから、AIが「調整力が高く、優先順位をつけて柔軟に対応できる人材」と書いたとします。
「営業担当に確認した」という発言はあります。しかし、どう確認したのか、返事が来なかったときにどう動いたのかは不明です。問い合わせの優先順位については、そもそも聞いていません。
読みやすい評価文になっても、確認できたことが増えたわけではありません。 「質問していない」が「できる」に変わったら、整理の範囲を越えています。
やってはいけないのは、空欄を人物像で埋めること
この場面で避けたいのは、情報不足をAIの推測で補い、その推測を評価の根拠にすることです。入口は違っても、問題は同じです。
- 性格へ広げる:「営業に確認した」から「協調性が高い」と断定する。
- 未確認を能力不足にする:優先順位の話がないだけで「段取りが苦手」と書く。
- 合否まで飛ばす:確認事項が残っているのに「採用を推奨」と結論づける。
話し方についても、同じ線引きが必要です。「丁寧だった」は担当者の観察として残せます。ただし、それだけで納期回答の正確さや、忙しい場面での対応力まで確認できたことにはしません。
名前や年齢など、今回の確認項目に必要のない情報から人物像を広げる必要もありません。入力には業務に関係する発言を選び、応募者情報を扱える社内承認済みの環境を使います。
氏名を消しても、会社名や具体的な経歴から本人が分かる場合があります。匿名化したから全部貼ってよい、とは考えないこと。 入力範囲は、利用環境と社内の取り決めに合わせて確認します。
評価を書く前に、確認したい行動を一つ決める
先ほどの営業事務の採用なら、いきなり「向いているか」を問うのではなく、確認したい行動を具体化します。
確認項目:納期が不明なとき、必要な相手に確認してから顧客へ回答する。
これなら、どの発言を拾うべきかが分かります。「明るい人」「感じのよい人」よりも、仕事の場面に沿って話し合えます。
そのうえで、メモを次の区分で整理します。
- 本人の発言:本人が話した内容。逐語記録でない場合は「発言要旨」と明記する。
- 担当者の観察:面談中に見聞きしたこと。本人の発言と混ぜない。
- 未確認事項:聞いていないこと、具体例が足りないこと。
この区分を作ってからAIに渡すと、「確認済みの材料」と「次に聞くこと」を分けやすくなります。担当者の印象は消さず、印象だと分かる場所に置くのがポイントです。
そのまま使える、面談メモの整理依頼
以下は、今回の営業事務の場面に使う短いテンプレートです。AIには採点や合否判定を頼まず、根拠と確認事項を整理してもらいます。
コピー用テンプレート
営業事務の採用面談メモを整理してください。
確認したい行動は「納期が不明なとき、必要な相手に確認してから顧客へ回答する」です。
次のルールを守ってください。
- 入力にある発言・観察だけを使う。
- 本人の発言と担当者の観察を分ける。
- 発言要旨を、本人の直接の言葉として引用しない。
- 性格、適性、能力を推測で断定しない。
- 記載がないことは「未確認」とする。
- 点数、順位、合否は出さない。
出力は次の順にしてください。
- 確認項目に関係する発言
- その発言から確認できる範囲
- まだ確認できないこと
- 次回の面談で聞く質問を一つ
面談メモ: ここに、入力してよい範囲のメモを貼る。
「確認できる範囲」を指定するのは、経験の有無と、仕事を任せられるかの判断を分けるためです。AIが指定を守るとは限らないので、出力後の照合までを作業に含めます。
出力の良し悪しは、文章の上手さで決めない
先ほどのメモなら、次のように整理できます。これは期待する出力の例であり、応募者の評価が確定したという意味ではありません。
関係する発言 「納期が分からないときは、営業担当に確認していました」
確認できる範囲 本人は、納期が不明な場合に営業担当へ確認した経験を述べている。
まだ確認できないこと 確認後の顧客への伝え方、営業担当から返答がない場合の対応、問い合わせが重なった場合の優先順位。
次回の質問 「納期について営業担当から返答が来ないとき、顧客にはどう対応しましたか。具体的な例を教えてください」
ここでは「調整力が高い」という評価を足していません。その代わり、追加で聞くべきことが具体的になっています。
質問への回答が得られたら、実際の行動をメモに追記します。聞けなかった項目は未確認のまま残し、社内で決めた評価基準に沿って、人が判断します。
共有前に、元のメモへ戻る
社長へ評価の下書きを渡す前に、出力の各文を元のメモと照合してください。読み直す順番は、褒め言葉よりも、その根拠からです。
- 発言の出所確認:どのメモに基づく文か、指させるか。
- 推測の混入確認:メモにない性格や能力を足していないか。
- 未確認事項確認:聞いていないことを、できる・できないに変えていないか。
- 次の質問を一つ:不足している行動の具体例を聞ける質問になっているか。
たとえば「顧客対応に問題なし」と書かれていたら、その根拠となる行動を探します。見つからなければ、その文を削るか、未確認事項へ戻します。
また、応募者を並べるときも、メモの長さを能力差と取り違えないようにします。同じ確認項目で、片方だけ具体例があるなら、もう片方には追加確認が必要です。AIに文章量の差を点数で埋めさせないでください。
最初の一歩は、「なぜそう言える?」を一文に向ける
AIに面談メモを整えてもらう目的は、立派な評価文を作ることだけではありません。根拠を見つけやすくし、判断前に残っている疑問を明らかにすることです。
まず、手元の評価文から「調整力がある」「対応力が高い」といった一文を選んでください。元のメモに、その判断を支える具体的な発言があるか確かめる。それがなければ、次の面談で聞く質問に変えましょう。
もっと具体的な手順とテンプレートが必要な方へ
面談メモから発言を抜き出し、未確認事項を残した評価の下書きと、追加質問を作る手順を扱います。こうしたAI活用を社内で回せる形にまとめた有料記事があります。

この記事の続きを、社内で回せる形にまとめました
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